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2018/01/04

「RXN -雷神-」のストーリーを解説しつつ、いろいろ考察してみる

大体愚痴を書く場所と化してるこのブログですが、今回は「RXN -雷神-」というゲームに関してです。
「RXN -雷神-」は、縦スクロール型STGです。ステージが細かく分かれており、「世界観を気持ちよく味わえる、シンプルで優しいストレスフリーなゲーム」を目指して作られたとのことです。

Switchを買って以降、ゼルダやマリオ、スプラトゥーン等のパッケージソフトの他、「Human Resource Machine」「Fast RMX」「Thumper」等のDL専用ソフトも買って、どれも非常に楽しめたので、何か他にもソフトが買いたいな、と思っていました。

その時見つけたのが、まさにこのツイートです。
私は割と前評判をかなり慎重に調べてから買うタイプなのですが、とにかくSwitchのゲームが欲しいと思ってたので、このツイートと記事の内容にビビっときて、e-shopで4000円超という価格に驚きつつ、PVを見てなんか怪しいと思っても気にせず、自分の直感を信じて買ってしまったのです。

でまあ、実際プレイしてみてすぐ「やっちまった……」と思いました。
とにかく「爽快感が皆無!」この一言に尽きます。
具体的に何が悪いのかは、以下のレビュー等を見れば分かると思います。

一通りプレイしたあと、Twitterでも酷評の嵐なのを見て、自分だけではなかったと重い安心しました。
それと同時に「クソゲーを買ってしまったこと」自体が割と面白いかもしれない、とも思い始めたのです。4212円あれば他のゲームを買えたと思わなくはないですが、せっかく人が欲しくないと思うようなゲームを運悪く買ってしまったんだし、それをちょっとでも楽しんでみようと思ったのです。

ゲームプレイ部分の問題については、既に先に挙げたような記事に非常によくまとまっています。一方、ストーリーについてはあまり言及されていません。IGNのレビューでも言われているのですが、このゲームは確かに「ストーリーがまったく頭に入ってこない」のです。私も初回のプレイではほとんど理解できませんでした。

でも、他の人のレビューが複数出てきて冷静になってくると、もう一度プレイして、ちゃんとストーリーを読み解いてみたいと思いました。
そこで、ここでは「RXN -雷神-」のキャラクター設定とストーリーについて解説しつつ、疑問点や問題点を挙げていきたいと思います。その後、全体を通した問題点をいくつか挙げた上で、なぜ「頭に入ってこない」のかについても考察してみます。

しかし、調子に乗って楽しく書いていたらいつの間にかすごい情報量になってしまいました……。一応「問題点」のところだけ読んでもある程度分かるようにはしたつもりですが、時間があれば「登場人物」「あらすじ」も読んでみてください。


※注意
一応、ここからはネタバレを含みます。本来ならば「未プレイの方は読まないでください!」と言うべきところですが、正直買うべきではないと思うので、興味があるなら読んでみて下さい。
既にプレイしてしまって、早くこんなゲームのことは忘れてしまいたい人も、これを読めば少し見方が変わるかもしれません。




登場人物


設定がやや複雑なので、ストーリーを要約する前に主要なキャラクターの設定に触れておきます。また、Twitter上で公開された、本編の前の物語を描く「RXN連載小説」の設定にも触れます。RXN連載小説には、何枚か連載小説用の挿絵も用意されており、非常に気合が入っています。しかし、rec01~06まで公開されているのに05が欠番になっているなど、謎も多いです。

橘花ライト

18歳、男性。3人の主人公のうちの一人です。
性格はクールで、天才型。高い空間把握能力を持っています。搭乗する機体はRXN-101。連載小説によると、他の2人とは違い「邪魔だから」という理由でドローンを使用していません。
集中時に脳が活性化し、超人的な能力を発揮することができますが、自分自身で完全にコントロールすることはできないようです。しかし、この設定はゲームには特に反映されていません。物語中盤、ヒメノミからの「最期の授業」において、「君も自分のものでない鼓動と熱い血の匂いを感じるだろう?」と言われ、ライトは動揺したような様子を見せます。しかしこの発言の意味は最後まで明らかになることはありません

鳴門ルナ

17歳、女性。3人の主人公のうちの一人です。
幼少時に戦闘向けの「調律」を受けており、極限状況下での恐怖感の欠如や独特の倫理観を持っているほか、味覚などの感覚が弱くなっているそうです。連載小説によると、ジンに連れられてカレーを食べたことがきっかけで、辛いものが好きになったのだとか。
RXN-202に搭乗しており、連載小説によると4つのドローンにそれぞれ「ダル」「アト」「ポル」「アラ」と名前を付けているそうです。偶然分かりましたが、この名前は小説「三銃士」の登場人物を元にしているようです。こういうちょっとした小ネタは大好きです
チャプタークリア後に「ミラたんモフモフしたいよー」と言うことがあり、チャプター中でもミラたんに言及するシーンがあるのですが、これは人形なのかペットなのかは不明です。
「最期の授業」では「君が丙組の中で教育されてきたのは全てこの日のためだった」と言われますが、ルナは特に動揺しません。また、他2人がヒメノミを「博士」と呼ぶのに対し、彼女は「ヒメノミちゃん」と呼ぶなど、かなり仲が良いようです。

橘花ジン

22歳、男性。3人の主人公のうちの一人です。
社交的で優しく、真面目な性格。努力型ですが、弟に対し強い劣等感を持っています。
RXN-303に搭乗しており、連載小説によるとドローンには死角をカバーさせているとのこと。弱みを見せたくないところがあるようです。
また連載小説では、ヒメノミの部下である藤巻テンゴと個人的な親交があるようで、下の名前で呼び合う仲のようです。後にヒメノミと共に死亡している可能性が高いですが……
「最後の授業」では、ヒメノミに「どうしてΣBLOOD(シグマブラッド)なんて使った」と言われます。名前から察するに危険な薬物であると思われますが「ライトには負けたくなかったんだ!」と答えます。彼の劣等感はそれほどまでに強いようです。
ライトで32Bをクリアした場合は笑顔で「おかえり」とライトを迎えますが、内心どんな気持ちだったのか想像すると恐ろしいです

新衹チドリ

25歳、女性。RXNシリーズを率いる戦艦の艦長で、U.G.W.(世界統一政府)直属のキャリア組です。
副長のヒュウガとはそりが合わず、よくお互いに嫌味を言い合っているが、RXNのパイロットたちには「頼れる良き上官」であろうと努めています。
祖父が重機「スーパーガジラ」の開発に関わっており、ぬいぐるみも持ってるくらいスーパーガジラのことが大好きです。物語の序盤で、敵によって彼女の思考が読み取られ、スーパーガジラが敵として出現してしまいます。
25歳で艦長というのはかなりすごいと思いますが、ひょっとしてスピード出世を周囲から妬まれて、危険な最前線に向かわされたのでは……?
巨乳上官属性が一部の人にウケがいいです。

帯刀ヒュウガ

41歳、男性。作戦の指揮を執る副長で、U.G.W.に所属しています。
え、41歳!? というくらい若く見えます。謎の言動やボヤキが多く昼行灯な人。
世界の歴史や神々について独自に色々と研究しており、艦長から怪しまれるシーンも。中盤ではなぜかヒメノミの脱走の手助けをしたりと、不可解な行動が多いです。
機体選択画面で「発進準備ぃ」と気の抜けた声で言うことがあるのは彼です。これは声優さんが悪いのではなく、このシーンで昼行灯キャラにセリフを言わせること自体が間違っていると思います。

皇姫(ヒメノミ)

年齢不明、女性。軍をも統率する組織「丙組」の研究者で、「博士」や「姫」と呼ばれることもあります。RXNシリーズの開発に深くかかわっており、システムの根幹を知っている数少ない人物です。
本作で一番謎の多い人物です
数百年前の人物であるユナやマナのことを「ユナねぇ」「マナねぇ」と呼ぶなど、彼女自身も数百年前から生きている可能性が示唆されます。しかし、物語の中盤で突然、部下とともに艦内にあるRXN-606に乗って出撃します。そして「話をつけてくる」と言って敵の親玉である「マナ」の中に入って洗脳されてしまい、最期は多くの謎を残したまま主人公にマナもろとも破壊され、死亡してしまいます
しかもエンディングによってはなぜか生き返ります。というより、生きていたことになっている……?

寛成マサチカ

年齢不明、男性。ヒメノミの従者の一人で、真面目な性格。
連載小説によると、ヒメノミの指示で藤巻テンゴと同室で暮らしており、いつもテンゴの脱ぎ散らかした服を片づけたりしているのだとか。ライターに愛されていますね。人間らしい側面も描かれているのはいいことです。
しかし、本編ではあまり人間らしい行動はなく、物語中盤で「これより我ら丙組は、血の宿命に従い行動に入る」と言って、ヒメノミについて行って死亡してしまいます

 藤巻テンゴ

年齢不明、男性。ヒメノミの従者の一人で、おおざっぱな性格。
連載小説によると、主人公の一人である橘花ジンとは下の名前で呼び合う仲のようです。また、難しい四字熟語を使うというキャラのようです。
同じく物語中盤でヒメノミ、マサチカと共に死亡してしまいます

アユカ

16歳、女性。通常のRXNシリーズとは設計思想の異なるRXN-808に搭乗しており、「騎神」と呼ばれている伝説のパイロットです。主人公より若い伝説のパイロット……何か秘密がありそうです
「本作戦には参加しないはずだった」という設定のほか、物語を進めると「人形」「神話世界を生きた人物」「クローン」など色々な情報が明らかになりますが、最終的に何者だったのかは良く分かりません。数百年前から「騎神」としてクローンを何度も作って利用されているということでしょうか? また、同じく神話世界に生きていたと思われるヒメノミからは「アユカねーちゃん」と呼ばれています。
終盤では主人公の機体に同乗し、エンディングによってはラスボスを倒した後二人きりで並行世界を漂うことになります。 
連載小説によると、RXNには痛覚を含む感覚が搭乗者に伝わらないようにするコアが搭載されているのですが、このコアがあると気持ち悪くなるといって、危険を承知でヒメノミにコアを外させます。この時ヒメノミは「作戦には参加しないから大丈夫だろう」と言っているのですが、本編でヒメノミは「アユカねーちゃんのRXNも出そう」と言います。アユカを出撃させるのが危険なのを一番良く知っているのは、ヒメノミのはずなのに。おそらく、本編より後から書かれた連載小説の設定が矛盾しているのだと思います。

ユタカ

年齢不明、おそらく男性。ウルカと戦っている時に黒い機体に乗って現れ、人類と敵対する意思を示したために敵とみなされます。
胸元の開いた変な服を着ていますが、本作のラスボスです。
物語を進めていくと、ユタカは神話の時代から生きている人間であり、過去に「ヒカリ」という愛する人をユナに殺されたために、ユナを信仰する人類と敵対することを決めたことが明らかになります。
ある意味本作で最も出自や動機がはっきりしていて、最も人間らしいといえる人物です。

ユナ

数百年前、並行世界の移動と選択を繰り返し、人類に平和を取り戻した少女。当時16歳。人類を超越した存在であり、後に「神」として認識され、人類から信仰されるようになります。
RXNシリーズにはユナの一部が搭載されています。そのため、マナとの闘いの際、一度だけ声として登場します。

マナ

並行世界すべてを受け入れ吸収拡大しながら、完全な世界を目指す存在。全生命の意識や肉体までも一つにすれば、争いはなくなると考えています。
ヒメノミがユナとマナの二人を知っていることから、元々は知り合いだったが、何らかの理由があってユナと対立したと考えられます。
また、ウルカたちやユタカの信仰の対象でもあります。
あと公式サイトの説明文が「並行世界」ではなく「行世界」になっています。

登場人物の設定は以上ですが、組織の関係性について少しふれておきます。
本作には「アースガルズ」「U.G.W.」「丙組」という組織名が登場しますが、どのような関係になっているのか、はっきりとしたことは本編を見てもよく分かりません。
しかし、ヒメノミが単独行動する際のセリフに「アースガルズおよびUGWを離脱」というものがあることから、それぞれ独立した組織ではないことは確かです。
私の考えでは、「U.G.W.の中に丙組という秘密組織があり、ウルカを倒すために組織されたチームがアースガルズ」ということなのではないかと思っています。




あらすじ


ここからは、ストーリーを要約していきます。
ただしこのゲーム、次のチャプターを進む際複数のルートを選択できる場合があるのですが、ストーリーが各ルートをまたがって繋がっている場合があるため、その場合は時系列順に並べて要約しています。

公式サイトのストーリ

かつてユナという人類を超越した少女が、並行世界の選択と移動を繰り返して「基底世界」を定め、人類に平和を取り戻した。ユナは人類から神として信仰される存在になった。
しかし数百年の時を経て、ユナが並行世界を移動するために使った扉「儀の観測点」から突然、生物とも機械ともつかない存在が出現し人類を襲い始めた。この存在を敵と認定し「ウルカ」と呼ぶことにした。
このまま儀の観測点が開き続けると、全ての並行世界が繋がって世界が滅亡してしまうので、主人公たちは極秘裏に開発されてきた兵器「RXNシリーズ」を使って、ウルカを殲滅するために出撃した。
並行世界が繋がるとどうして世界が滅亡するのかは分かりませんが、おそらく「基底世界」が関係しているのだと思います。これ自体は特に問題ではないと思います。 
しかし、ゲーム中ではこのことは一切説明されていません。主人公たちが敵を倒す動機に関わる重要な設定が、公式サイトでしか説明されていないのは大きな問題です。

チャプター1~4

儀の観測点からウルカが出現したため、主人公たちはウルカを殲滅するために出撃する。
巨大な「渾天の儀」が制御不能となっていたためこれを破壊したところ、謎の黒い機体が出現、そのパイロットから通信が入る。「人類はまだこんなことをしてるのか、自分たちの信じているものの本性も知らずに」と言い残して並行世界へ逃走したため、「N世界シフト」を使用して追跡する。
黒い機体のパイロット(ユタカ)には「成すべきこと」があるらしい。ヒメノミは一筋縄では行かないだろうと考え、アユカを出撃させて先行させる。3人の主人公のうち、選んだ人以外の2人はアユカのバックアップに向かう。 
大きな問題はないですが、実際にプレイしているとすでにややプレイヤーが置いてけぼりになっている感は否めません。また、ユタカのセリフがほとんど聞こえなくなるシーンが複数あります。

チャプター5~13

ヒメノミが突然「指示があるまで何も考えるな、頭を真っ白にしろ」と言う。すると艦長の記憶が具現化し、重機「スーパーガジラ」がウルカとなって出現。これを撃破する。
ヒメノミは、ウルカについて何か話していないことがあるという。エーテルは大気中に存在するエネルギーのようなもので、ウルカもエーテルからできている。そのため、ウルカを倒すと跡形もなく消える。また、人類がユナを信仰するように、ウルカも「マナ」という神を信仰しているのだという。
さらに、ヒメノミはN世界シフトについて解説する。世界はエーテルの海を進む船のようなもので、海には無数の船がある。その船の間を移動することができるのがN世界シフト。だが、元の世界に戻っても全く同じ世界ではなくなっている。エーテルの海で沈没船のようになった世界では、記憶が具現化する「思念の融合」のような現象が起こることがあるという。 
この「元の世界に戻っても全く同じ世界ではなくなっている」という設定は、後に主人公が単独行動をする理由になるのですが、そのストーリー展開を作るための設定にも思えてしまいます。

チャプター14~16

黒い機体のパイロットとアユカの会話が聞こえるが、ノイズが入っていてよく聞こえない。しかしアユカの様子がおかしくなり、ユナの思考に取りつかれたような状態になっている。黒い機体のパイロットは「おい、どうしたんだアユカ!」「ハハハッ! お前、自分がどうなっているのか分かってないのか」「お前、人形じゃねーか!」と言っている。
アユカを追っていた二人は、追いつくことができなかった。アユカと黒い機体のパイロットの会話は、まるで友達と言い争っているようだったという。 
ユタカがアユカのことを「お前」と呼んだり「アユカ」と呼んだり、態度がかなりコロコロ変わっている印象を受けます。文面では分からないですが、実際のボイスを聞くとより強い違和感を覚えるはずです。
また、取りつかれたようになった理由も「人形じゃねーか」の意味も結局よく分かりません

チャプター17~18

アユカは黒い機体を止めることに失敗し、戻ってきた。パイロットの名は「ユタカ」というらしく、こちらに向かってきているという。
副長は「マナはここでギシキを始めるつもりなのか」と何か知ってる様子だが、艦長に問い詰められると「少し歴史に興味があるだけ」と答える。ユタカが激怒した様子で「アユカに何をした!!」と主人公たちに問う。「お前がアユカを倒したんじゃないのか」と問うと、ユタカは「お前のソレが何なのか、どうして戦っているのかもわからずに戦っているのか」と問う。「人類を敵から守るため」と答えると、ユタカは笑い「やっぱり貴様ら全員死んだほうがいい」と言って去る。
ユタカの言っていた「RXNが何なのか」という質問にヒメノミが答える。RXNにはユナの一部が搭載されているという。ユナは自分たちにとっての神であり、かつては実在した。「信じるものが違うやつには許せないこともあるんだろうね」とヒメノミは考える 
謎が謎を呼び、質問に質問で答える怒涛の展開。いよいよ理解が追い付かなくなってきます。
この「アユカに何をした!」と言うユタカも、なぜ激怒しているのかよく分かりません。
また、副長の言う「ギシキ」というキーワードは以降登場しません
こうした積み重ねが、重要な情報とそうでない情報との区別を難しくしています。

チャプター19~22

ウルカにとっての神、マナからの通信が入る。「全ての意識が一つになれば、争いは存在しません」「さあ、私の元へ還りましょう」
するとヒメノミの側近たちが「ヒメノミ様、機は熟したかと」「全ては転轆轆地(てんろくろくじ、順調にことが進んでいること)」「我々丙組は血の宿命に従い行動に入る」と言う。
艦長が制止するも、ヒメノミは眠っていたRXN-606という機体に乗って出撃。「マナねぇ」に話を付けてくるという。ヒメノミはUGWの離脱を宣言し、機体に「ヤタガラス」という名前を付ける。副長は主人公にヒメノミの援護を指示、主人公が「本当にいいのか」と問うと「ああ、頼むよ」とヒメノミ。
マナの元へ向かう途中でヒメノミは主人公に「最期の授業」を行う。(この時の会話の内容は選んだ主人公によって異なる)
目標に着くと、そこには巨大なウルカがいた。ヒメノミは「マナねぇとユナねぇが出会ってしまう前に、元の場所に戻さなきゃ」と言い、主人公の制止も聞かず「マナねーちゃんに会えるはず」と言って巨大なマナの体内に突入。
結果、ヒメノミはマナに洗脳されてしまい「すごくあったかい」「みんなもおいでよ」などと言う。マナは主人公も洗脳しようと「あなたは私、私はあなた」「あなたの存在は既に私の一部」といった精神攻撃を仕掛ける。しかし、主人公はユナの力によって守られ、マナをヒメノミもろとも撃破する
その後、艦長の指示でN世界シフトを行う。 
「まだ助けられるかもしれない」というようなセリフもなく、主人公は躊躇なくヒメノミを取り込んだマナを破壊してしまいます。第一、艦長の命令を無視してヒメノミの独断専行の手助けをしたのも主人公であり、それはマッチポンプというか、ヒメノミを殺したに近いのでは……。
また、結局最後までヒメノミの行動の理由が明かされることもありません。副長が手助けした理由も分かりません。全てが不可解です。
あと、最後のN世界シフトは恐らくユタカを追うためのものと思われますが、そうなるとおかしな部分があります。理由は後述します。

チャプター23~24

「このままウルカの本体に近づいて行って倒しても、私たちは元の世界に戻れるとは限らない」と鳴門ルナが言う。
主人公は「みんなは今なら引き返せる、ここから先は私一人で行く」と言って単独でユタカを倒しに向かう。「生き延びなさい、これは命令よ」と艦長。主人公とアユカ以外の仲間は地球に帰るため、N世界シフトを行う。
主人公はユタカの黒い機体と対決する。アユカ曰く、ユタカはアユカと同じく神話世界を生きた人間だったが、ユナの考える世界から抜け出した「堕神」であるという。
アユカによると、以前追っていた時よりユタカは強くなっていた。ユタカは「お前たちが倒したマナを食った」「未来も過去も空間も今、全て俺の中にある」という。
ユタカを倒すも「本当のゲームはこれからだ」と言ってまた逃走する。  
おかしな点がいくつもあります。
  • 地球を救うためのチームが、仲間を一人残して帰還してどうするのか。
  • 主人公が「ユタカとアユカは神話時代を生きた人間だった」と聞いても驚きもしないないのはなぜか。
  • ユタカの言う「マナを食べた」とは具体的にどうやったのか。
  • マナを倒した後、ユタカを追ってN世界シフトしたはずなのに、ユタカがマナの残骸を食べることができたのはなぜか。
……ちなみに、アユカが「808で追っていた時より反応が強い」と言っていることから、アユカはRXN-808に乗らず、主人公の機体に同乗したものと思われます。ヒメノミが死亡した時も「『博士たち』の機体も残念ながら破壊を確認している」と副長が言っているので、RXNにはヒメノミとその側近が乗ることができるぐらいのスペースはあるのでしょう。それでも、アユカが何のために、いつから主人公の機体に乗っていたのかは分かりません

チャプター25~28

異常なエーテル反応が複数確認される。
渾天の儀やマナを模したウルカ、スーパーガジラなど、かつて倒した敵が複数登場する。いずれも以前より強くなっており、ウルカは別時空の戦闘の情報を共有しているとアユカは推測する。
ユタカはウルカを相手に苦戦する主人公を見て「自分が無力だと感じるのはどんな気分だ」「無力では何も守れない。俺は愛するものをユナから守れなかった」と言う。
「種の存続のために一つの命を握りつぶすような神は本当に神なのか」というユタカの問いに、主人公は「生きて行くためには、誰かを犠牲にしなければならないこともある」と答える。ユタカは「知ったような口を利くな、自分が死んだ100年後に何の価値がある」と主人公の主張に反対する。
ユタカがなぜユナを信仰する人間と戦おうとするのかが分かる、重要な部分です。自分が無力だったせいで、愛する人が死んでしまったという自責の念が読み取れます。 
主人公とユタカは互いの主張をぶつけ合っていますが、どちらの主張にも一理あるでしょう。
しかし、マナを模したウルカと再戦する時、主人公は「あの敵は博士と一緒に倒したはず」などと言います。「犠牲はつきもの」というのがユナの考えであるとはいえ、その発言はちょっと無責任では……。

チャプター29~30

ユタカ曰く「そこのアユカ、クローン達にもそれぞれの人生がある、いやあった」「貴様らはその事実を受け入れず大義名分を掲げ、命さえもパーツにしやがった」
「兵器のためにクローンを作るような人間どもが愛を語るのか?」
主人公は「それでも生命を大切に守り育てながら精一杯生きて、次の誰かにバトンタッチする、それが歴史になって行く」と答える。
しかしユタカは「人間など生かしておいても価値がない、俺は人間をユナごとマナに取り込む」「全てがマナとなり、一繋ぎの弦となれば、時間も空間も全ての可能性すらも一繋ぎだ」「そこでは生きることも死ぬことも完全に等価となる」と言う。
主人公は「この戦いで死んでいった人たちは世界をより良くするために死んでいったんだ。新しい時代を作るのは神様じゃなく人間だ」と答える。
ユタカは「俺の愛したヒカリはユナによって殺された」「ならば俺がマナの力を使って世界を再構築し神となる」と言う。
アユカがクローンであるという情報に、主人公は特に驚きません。当たり前の事実のようにスルーされており違和感があります。当然プレイヤーにとっては初耳なので、何か説明が欲しいところです。
また、ここでユタカの「愛する人」の名前が「ヒカリ」であることが分かります。ヒカリの死をなかったことにするために、世界の全てを一つにし、生と死を等価にしたいというのがマナを信仰するに至った大きな理由であったと言えるでしょう。
省略しましたが、主人公とユタカは「人間が人間を罰するなんておかしい」「俺はもはや人間ではない」というような言い争いも繰り広げています。しかし、博士と慕っていた人を殺してもケロッとしてる主人公より、愛する人を守れなかったことに苦悩するユタカの方が、よほど人間らしいかもしれません

チャプター31~32

敵を全て倒し、残るはユタカを倒すのみ。
「おそらくもう巨大なウルカを作り出すことはできないはず」とアユカ。複数のポイントでエーテルが増大しており、ユタカが儀の観測点を開こうとしていると思われるとのこと。主人公とアユカはユタカの元へ急ぐ。
そして、ついにユタカと直接対決。ユタカは自らの黒い機体に名前を付ける「この機体に名前を付けるとすれば、RXNなんて過去の名前は捨てよう」「こいつはもはや俺の肉体そのもの。『雷切』だ」勝負が終盤に差し掛かると、主人公はアユカに「RXNの感覚抑制をすべて切ってくれ」アユカは「そんなことをしたらRXNの全ての感覚がフィードバックされてしまう」と言うも主人公は「そうしないとユタカには勝てない」
そしてついにユタカを撃破する。 

Aエンド

ユタカ「動かない、終わったのか。これでやっと光の許へ行ける…」「長かったな、最初からこうすれば良かったのか…」
主人公「これから先ずっと一人か」
アユカ「はずれ、ここには私もいるんだな」(原文ママ)
主人公「アユカと二人きり、まあ悪くないか」
そして二万年後、地球上空で「RXN」と書かれた機体の残骸が発見される。

Bエンド

ユタカ「なんだ、ヒカリ、ずっとそこにいたのか。ああ、そうだな、行こう」
オペレーター「RXNとのコンタクトに成功、こちらから呼びかけることができます」
艦長「よくやった、最後の命令だ。N世界シフト座標は…」
アユカ「どうする、本当にこのままこの辺を彷徨う?」
主人公「大切な人がいる、戻るに決まっている」
アユカ「了解、N世界シフト開始します」
最後は、選んだ主人公によって異なる人物が「おかえり」と声をかける。 
「雷切」て、そこは雷神じゃないんかーい!! 
ユタカの機体もRXNであったというのも初情報ですが、なぜあえてタイトルを回収する絶好のチャンスを逃したのでしょうか……。
エンディングはチャプター32Aと32Bのどちらを選んだかによって変わるのですが、主人公が何か異なる選択をした結果として結末が変わるわけではなく、ユタカを撃破するまでの展開はまったく同じです。
また、鳴門ルナを選択して32Bをクリアした場合、なんと死んだはずのヒメノミが「おかえり」と声をかけてきます。何らかの力によって生き返ったという理由を付けることは不可能ではないとは思いますが、初めてプレイした場合「どうして生きてるんだ? 何か見落としたか?」と感じてしまいます。他の主人公を選んだ場合は登場しないので、なぜルナENDにのみヒメノミを登場させたのかも不思議です。

以上がストーリーのあらすじです。




問題点


いよいよ問題点をまとめていきます。ここまでの説明で赤字で示してきた部分は、特に重大であると思われる問題で、ここで詳しく解説していきます。

新しい情報を提示する際の基本が守られていない

気づいた方もいるかもしれませんが、全編を通して、新しい情報が登場した際、それが重要なのか、特に重要ではないのかが区別できないのです。それが、RXN雷神のストーリーが「頭に入ってこない」と言われてしまう最大の理由です
情報の媒体にもよりますが、アニメや会話だけで進行するゲームにおいては、その情報を聞いて、登場人物が驚いたり特に反応しなかったりする場合は「さほど重要ではない情報」や「重要だが既知の情報」であることが多く、登場人物が何か反応を示した場合は「重要な未知の情報」であることが多いです。
しかし本作においては、登場人物が特に反応を示さないのに「重要な未知の情報」であったり、登場人物が反応を示しているにもかかわらず「さほど重要ではない情報」である場合がかなり多いのです。前者は「マナねーちゃん」
「アユカがクローンであること」など、後者は「ギシキ」「ライトの自分ではない何か」などがその例です。そのため、多くのプレイヤーが頭の中で情報を整理できず、ストーリーの展開について行くことができません。ゲームだけでなく、物語を書く上での基本的なルールが、RXN雷神では守られていないのです
しかし、最初からそうだったのでしょうか?
RXN雷神は、チャプター毎の会話が長く、スキップもできないためテンポを大きく損なっていることが欠点としてしばしば挙げられます。でも、私はこれでも既にある程度会話を削除しているのではないかと思うのです。その過程で、削除してはいけないセリフを削除してしまった結果、今の頭に入ってこないストーリーになってしまったとは考えられないでしょうか。これについては後で考察します。

公式サイトを読んでいる前提で物語が進む

公式サイトのストーリーやキャラクターの欄には、本編のストーリーに関わる重要な設定が書かれています。「ウルカを野放しにして儀の観測点が開かれ続けると、全ての並行世界が繋がって世界が滅びてしまう」という、主人公たちが敵を倒す動機に関わる重要な情報が、本編ではどこにも書かれていないのです。 
確かに、長い世界観の設定をゲーム本編中に入れることは難しいかと思います。しかし「エースコンバット」や「スターフォックス64」のように、それこそ映画「スターウォーズ」のように、「ゲームを開始した時に世界観を説明する文章を流す」というような手があったはずです。これに関しては、ゲーム中に操作説明やゲームシステムの説明がないことも合わせて考えると、プレイヤーの視点でゲームを見ることができていないと言わざるを得ないです。

「渾天の儀」が出てこないのに「渾天の儀を確認」というセリフがある

チャプター5において「観測不能空間に巨大な渾天の儀を確認」というセリフがありますが、その先で出てくるボスはスーパーガジラです。また、チャプター11でも全く同じ会話が用いられますが、同様に渾天の儀は出てきません。チャプター14にも「渾天の儀かもしれない」という会話があり、これもチャプター20で再利用されますが、いずれも渾天の儀は出てきません。
嘘の情報が混じっているため「渾天の儀」が何なのかが全く分からなくなってしまうのです。これもまたストーリーが頭に入ってこない原因の一つです。
それだけではありません。タイトルが「観測点」となっているチャプターの会話の多くが他のチャプターの会話の使いまわしであり、チャプター9と同じ会話も3回使われています。後の考察でその理由を考えてみます。

並列しているはずのチャプターの物語が繋がっている

次のチャプターを進む際複数のルートを選択できる場合があるのですが、ストーリーが各ルートをまたがって繋がっている場合があります。最も顕著なのはチャプター21A、21B、21Cで、それぞれ「機は熟した」「ヤタガラス出撃」「最期の授業」の順で繋がっているのです。なぜこんなことになっているのか、これも後で考察します。

連載小説の内容が本編と矛盾している

「RXN連載小説」においては、アユカが「コアがあると気持ち悪くなる」と言って、RXN-808に搭載されたコアを取るようヒメノミに頼みます。コアには搭乗者のダメージを代わりに受ける役割があり、ヒメノミも「危険すぎる」と言いますが、「作戦には参加しないから」と渋々コアを取り除きます。
しかし、本編の序盤において、謎の黒い機体が現れた際、ヒメノミは「アユカねーちゃんのRXNも出そう」と言って、アユカを出撃させます。おいおい、ヒメノミもアユカも、自分たちでコア取ったの忘れたの!?
これは、本編に矛盾があるのではなく、連載小説の方に矛盾があるのだと思います。それでも、単に「アユカが出撃する」というだけの情報を見逃すとは考えにくいですが……

一部、ゲーム上の展開とセリフが一致していない

会話が始まると同時に敵が出てくるステージに顕著で、チャプター12Aでは主人公が「巨大なウルカなんていない」と言っているのに巨大なウルカが出てきていたり、チャプター6Bでは副長が「戦闘態勢に入れ」と言う頃にはもう戦っていたりします。

同じ敵を使いまわしている敵をごまかすための会話に無理がある 

ゲームシステムにも関わる部分ではありますが、当然のように同じ敵を使いまわした上で、「動きが全然違う」「強くなっている」と言われても困惑してしまいます。
確かに敵の耐久力と、敵の弾のダメージは上がっていますが、弾幕のパターンは変わっておらず、よける難しさも変わっていないため、より強くなった敵と戦っている実感は薄いです。同じ敵を使いまわすなら、せめて見た目分かる変化が欲しかったです。

地球を救うためのチームが、仲間を一人残して帰還?

チャプター23「決意と涙」において、「このままウルカの本体を追っていくと元の世界には帰れないかもしれない」という話になり、主人公は「今なら引き返せる、ここから先は私一人で行く」と言います。艦長は「生き延びなさい、これは命令よ」と言いますが、そうじゃないでしょう。危険を承知で地球を救うために向かったチームなのに、一人残して帰ってどうする。敵前逃亡じゃないかそれは。(厳密にはアユカも乗ってるので二人ですけどね) 

ルナENDでヒメノミがなぜか生き返る

ストーリー中盤でマナに取り込まれてしまったヒメノミは、後にヒメノミの乗っていた機体が破壊されていることが確認され、ほぼ確実に死亡していると思われます。しかし、鳴門ルナでチャプター32Bをクリアすると、仲間の通信の最後で、まるでそこにいて当然であるかのようにヒメノミが「おかえり」と言うのです。並行世界があるからとか、マナを倒したからとか、世界観に沿った説明はいくらでもできるとは思いますが、特に何の説明もなく、誰も驚きません。ルナ以外の主人公でクリアした場合は登場しないので、なぜここで登場するのか全く分からないのです。

その他

その他、小さな問題をいくつか挙げていきます。

セリフを一時停止・スキップできない

難解な部分ではゆっくり読みたいし、経験値稼ぎがしたいときはスキップしたいものです。戦闘中に会話が行われるシーンはともかく、冒頭やステージの終わりの会話はAボタンで進められるような形式にすべきだったと思います。
正直に言えば、メモを取るのが大変だったという個人的な理由もある。

特に必要のない、冗長な会話

ウルカと呼ぶ理由の説明や、「誰かが想像した物がまた出るのか」という会話、マナに精神攻撃をされた時の主人公のセリフなどがその例です。これらは全て、敵が出てくると同時に展開される会話であるというのが特徴です。他の説明不足な会話と比べて、内容がかなり冗長で、妙に詩的であるとさえ感じます。
しかし、見ようによっては「冗長性を持たせてあって理解しやすい」とも言えるかもしれません。

「君の名は。」ネタが二回も登場する

一回目はチャプター6Aをジンでプレイした場合の会話「『君の名は』とウルカたちに聞くわけにもいかないからな」で、二回目はチャプター10Aのタイトル「神の名は。」です。一回だけならゼルダBotWでもありましたが、二回となるとさすがにしつこい!
1月3日に「君の名は。」が地上波初放送されてましたね。映画館でも見ましたが、あれはやっぱりいい映画です。

「あの敵は博士と一緒に倒したはず」

チャプター27B、マナがボスとして再度出現した際のセリフです。主人公がヒメノミの手助けをしたから、ヒメノミはマナに取り込まれ、マナを倒したらヒメノミも死んでしまったのですから、主人公も少しくらいは責任を感じていてもいいはず。わざわざ「博士と一緒に」を言う必要はあったのでしょうか……。

「雷神」というタイトルは回収されない

最終チャプター、ユタカが自らの機体に名前を付けるシーンという絶好のチャンスで登場する名前は、なぜか「雷切」です。
しかし、リリース直前に公開された「RXN、出撃直前」というこの動画では、最後に「雷神」と言ったのはおそらくユタカです。

うーむ……「雷神」になるはずだったのに、どうしてもできなかった理由があったのでしょうか?

ラスボスの挿入曲が致命的に展開と合っていない

ユタカが第3形態になると「ワールド×ワールド」という楽曲が流れますが、この曲があまりにもミスマッチなのです。というのも、このシーンで主人公は感覚抑制を切って決死の攻撃を仕掛けているのに、「やっと見つけたよ」とか「World is mine」など、妙に明るい曲調の歌が流れるのです。良い曲だとは思いますが、使いどころをあまりにも間違えています。

ユタカを倒して終わりなのか?

ウルカのボスはマナであると思われますが、マナを倒しても終わりではないということは、マナはウルカの本体ではないということです。しかし、最後の敵はそのマナの残骸を「食べて」パワーアップしたユタカで、このユタカを倒すとエンディングとなります。
本当にこれで全て終わり……?

ユタカのセリフが全体的に聞こえにくい

些細なことではありますが、全編にわたって音量バランスの調整が不十分です。




考察


ストーリーを追ってみて問題点をいくつか挙げてみた結果、色々と考えられることがあります。

元々は完全な一本道のゲームだった

もしかすると、すぐに気づいた方もいるかもしれません。間違いなく、RXN雷神は、当初はエンディングまで完全な一本道だったのです。それも、今のようにストーリーに分岐を作ったのは、ほぼすべてのボイスを収録し終わった後です。
まず、「並列しているはずのチャプターの物語が繋がっている」のを問題点としてあげましたが、当然これは元々連続していたチャプターを分割したからでしょう。
また、分岐点にあたるステージの名前が全て「観測点」になっており、セリフが使いまわしになっているのも、分岐に理由を付けるためにステージを無理やり増やしたからです。「基底世界の揺らぎ」「エーテル値が反転」といった並行世界が生じている理由付けに使えそうな文章が出てくる会話を、分岐点で再利用したのだと思います。その結果「渾天の儀」という言葉が渾天の儀が出てこない場所で用いられることとなり、プレイヤーの混乱の原因になりました。
さらに、最後のチャプター32A、32Bも、元々一つのエンディングだけしかなかったのを、バッドエンドとグッドエンドに分割したものであると思われます。なぜなら……
(赤字はAエンド、青字はBエンド)
ユタカ 「これでやっと光の許へ行ける」→元々は「これでやっとヒカリの元へ行ける」だった
ユタカ 「なんだ、ヒカリ、ずっとそこにいたのか」

主人公 「これから先ずっと一人か」
アユカ「はずれ、ここには私もいるんだな」(原文ママ)
主人公 「アユカと二人きり、まあ悪くないか」オペレーター「RXNとのコンタクトに成功」アユカ 「本当にこのままこの辺を彷徨う?」主人公 「戻りたいに決まってる」
とすれば、ちゃんと会話が繋がるからです。そして、限られた予算と時間で作れるエンディングを考え、声優さんを一人だけ呼んで、バッドエンド後の「二万年後に地球上空に帰ってくる」というシーンを作った。
実に巧妙です。気づいたときにはかなり驚きました。 
昨今のゲームの評価においては「自由度」は非常に重視されます。何も本筋から外れたことができないと「リニアなゲーム体験」と批判されてしまいます。だから、そうならないよう、ボイスの再収録をしないで済む範囲でストーリーを分割し、自由度があるように見せたのです。前に見たボスとの再戦などは回避できるようにもなっているという良い面もありますが、本来一本道のはずのストーリーが分割されてしまっているという悪い面も大きいです。
しかし、ギリギリになって後からこんな細工をするぐらいなら、最初から自由度を考えた上でゲームを設計してほしかったと思います……。

テンポを良くするために一部のセリフを削除してしまった


やはり「新しい情報を提示する際の基本が守られていない」のは、会話が長すぎると感じて、セリフを無理やり削除したからではないかと感じます。
プロの脚本家が関わっているにも関わらず、こんな初歩的なミスを犯すとは思えないのです。新しい情報が提示された後には主人公が驚く会話があったように思えますし、「最後の授業」の会話など、微妙に会話の繋がりが不自然に感じる部分もあります。
何より「特に必要のない、冗長な会話」を小さな問題点として挙げたように、戦闘中に会話が流れる「ウルカと呼ぶ理由の説明」「エーテルの説明」「N世界シフトの説明」など、短くする必要のないシーンでは、やや冗長ではあるものの、比喩などを使って丁寧に説明しています。本作の脚本家は、本来であればこのような分かりやすさを心掛けた文章を書くタイプに思えるのです。 
チャプター開始時の会話が長すぎることについては、開発者も気づいたはずです。それを、可能な限り短くしようと、後から手を加えてしまった結果こうなった可能性は高いと思います。
これらのセリフを省略しなかった場合、今以上に「会話が長すぎる」という批判を受けていたと思いますし、ストーリーが分からないのと、どちらを選べと言われたら悩ましいところです。
それでもやはり、多くの人は会話が長いと感じると思います。
この手の問題は往々にして「これでも良くなった方だ」という段階で開発者や「その環境に慣れた人」が満足してしまうことが多いと、個人的には思うのです。
私は完成したRXN雷神に初めて触れたので、Aボタンで会話を早回しできるようにするなど、もっと会話を短くする必要があると思いましたが、開発の初期段階からこのゲームをテストプレイしてきた人には、会話を短くする必要性は見えていなかったのかもしれません。 
そもそも、これだけ大きな世界観を、各チャプター間の会話だけで説明しようというのはやはり無理があったのではないでしょうか。ノベルゲームのような会話だけが行われる、説明用のチャプターがあってもよかったと思います。
むしろ、当初はそれを想定して作っていたようにも思えるのです。本編中では顔の部分だけを四角く区切った画像だけが使われていますが、オープニングを見る限り太ももから上ぐらいまでの立ち絵がちゃんと用意されています。この立ち絵はノベルゲームのように左右に人物が立って会話するシーンを想定して作られていたかもしれないというのは、考えすぎでしょうか?

前日譚の作品を作る構想がある

これに関してはあくまで想像に過ぎないですが、ありえる話だと思います。
本作のストーリーのバックグラウンドには、マナとユナの戦いの始まるかなり壮大なストーリーがあります。また、ヒメノミやアユカ、ヒカリに関するストーリーなど、作中で意図的に回収していないと思われる謎が複数あります。
悪い意味ではなく、とても高い理想を持って作られたゲームなので、「RXN雷神が成功したら、前日譚にあたるゲームも出したい」という夢を持っていたとしても不思議ではありません。
現状の評価では続編は望み薄だとは思いますが、できることならどのような形であれ前日譚を見てみたいとは思います。





いかがだったでしょうか。
まさかこんな長文になってしまうとは思ってもみませんでしたが、別にすごく怒ってるとか、開発者をバカにしてるわけでは決してないです。
豪華な声優やデザイナー、イラストレーター、書家などを呼び、今までにない新しいゲームを作ろうと挑んだ開発陣の情熱は間違いなく本物だったと思います。だからこそ、本気で情熱を注いだはずのゲームが、どうしてここまで酷評されるものになってしまったのか気になったのです。
RXNのTwitter公式アカウントも、リリース前の積極的な動きはどこへやら、ずいぶん静かになっています。本気で挑んでいたからこそ、酷評されたことに本気でショックを受けている証拠だと思いますし、なんともいたたまれない気持ちになります。

ここまで調べてみて、RXN雷神というゲームにすごく愛着が湧きました。クソゲーだという評価はゆるがなかったけど。

なぜ「頭に入ってこない」のかという疑問の答えが分かっただけでも、考察に挑んだ価値は十分にありました。
それから、ストーリーの問題を調べるために何度も色々なステージをプレイしたことで、最初にプレイした時には気づかなかったシステム面の問題も見えてきました。気が向いたらまた別にまとめてみるかもしれません。


最後に余談ですが、ボス戦とかで出てくる、オレンジの経験値出す硬い敵と、緑の経験値出さない硬い敵がいますが、実は壊せます
終盤のステージのは厳しいですが、序盤のステージのならレベルカンストしたルナのYショットなどであれば簡単に壊せるはずです。ぜひやってみて下さい。

それでは!