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2018/09/26

「アカとブルー」の動画投稿禁止について考える

はじめに

皆さんは「アカとブルー」というゲームをご存じでしょうか?

「アカとブルー」は、2017年8月10日にiOS/Android向けに発売された弾幕系のシューティングゲーム(STG)です。開発したのは、たった2人の従業員で運営しているという「株式会社タノシマス」さんです。

ボムを使って弾幕を消すとエネルギーが溜まり、再びボムが使用可能になるというシステムが特徴で、テンポ良く展開される熱いストーリーと、難しいながらもリトライしやすい工夫がなされたシステムのおかげで、非常に遊びごたえがあります。お値段も960円とお手頃なので、まだ遊んだことがないなら是非買うべきゲームです。
(まあ、この記事を開くのは既にプレイした方が大半ではないかと思いますが)

そんな大変すばらしいアカとブルーですが、みなさんは約半年前に、このゲームの動画の投稿をタノシマスさんが禁止したことを覚えていますでしょうか?

この記事では、動画の投稿が禁止されるに至った経緯について振り返った上で、このようなことになってしまった原因が何であるか、私個人の考えと意見を述べたいと思います。

このような記事を公開した目的の1つは「禁止されていることを知らずに動画やスクリーンショットを公開している人」に知ってもらうことです。しかし、禁止されていることを知っている人でも、その経緯については色々忘れていたり知らないこともあるでしょうし、気づいていないこともあるはずです。そのため、改めて動画の投稿が禁止された経緯をきちんと記録に残すことも目的としています。

色々と書いていたら約25000字と異常な長さになってしまいましたが、時間がない方もせめて経緯の部分だけでもは読んでいただけると幸いです。


禁止されるまでの経緯

まずは動画の投稿が禁止されるまでの経緯を、ゲームの発売から簡単に説明します。

2017年8月10日

アカとブルーがApple StoreとGoogle Playにて発売されました。

2017年8月18日

発売から約1週間後のこの日に、タノシマス公式アカウントから以下のツイートがありました。
リンク先のURLは、後に「動画投稿禁止」の内容で上書きされてしまっており、当時の記事の内容を読むことはできませんが、私がスクリーンショットを撮った2018年2月18日の時点では、本文は以下のようになっていました。
内容は要するに「ネタバレ禁止」ということです。シナリオモードというのはキャラクターの会話と画面左上のワイプの有無を切り替えることのできる機能で、動画の配信時にネタバレを防止することができるほか、何度もプレイしていて会話を聞き飽きた方向けの機能でもありました。

この記事は動画の投稿が禁止されるまでの間、Twitterでbotを使って毎日告知が行われており、「配信されてから約半年」とあるように、時々内容が更新されていたようです。

2017年10月7日

著作物について」という記事が公開されました。

この記事も同様にTwitterでbotを使って毎日告知されていましたが、12月11日を境に告知は止まっています。なぜこの記事に触れたかは、後で説明します。

2018年2月17日

この日の16時頃に、ある動画がニコニコ動画に投稿されます。投稿者は様々なゲームの「VOICEROID実況プレイ」と呼ばれる動画などを投稿されているUDMPさんという方です。あえて名前を挙げましたが、決して「晒す」ことが目的ではないことを先に言っておきます。

投稿された動画がこちらです。
この動画は既に削除されています。

VOICEROID実況プレイ」というのは、VOICEROIDという合成音声を生成するソフトウェアを使ってキャラクターに声をあて、ゲームの実況プレイを行わせるという動画のことです。私も実際にこの動画を見たのですが、「ネタバレ禁止」のルールには違反しておらず、その他にもおかしな点があるとは感じませんでした。

この動画の内容については、経緯の次に詳しく説明します

同日23時頃、UDMPさんは自分のTwitterアカウントに、タノシマス公式Twitterアカウントから動画の削除を要請するDMが届いたとツイートします。UDMPさんは要請を受けて直ちに動画を削除し、メールを通して謝罪しました

UDMPさんは、この時のタノシマスさんとのやり取りについて削除後の動画のコメントやTwitter上で触れていますが、削除の理由および「どのような点を修正すればよいのか」について問い合わせても「著作権を侵害しているため投稿はできない」という以外の説明はなかったとのことです。

この動画以外にも投稿されている動画はYouTube等にも多数あり、中には「ネタバレ禁止」を守ってすらいない動画もあったのに、この動画だけが理由の説明もなく削除されたことで、少数ながらタノシマスさんの対応に疑問を持つ人もいました。

2018年2月19日

動画が投稿されてから、2日後の14時頃に、タノシマスさんはTwitter上で動画投稿の禁止を告知しました。

『アカとブルー』の動画投稿・配信を禁止
先ほど述べた通り、この記事は「ネタバレ禁止」の記事を上書きする形で公開されました。禁止する理由については「一部の方に『上記の条件を満たしていれば、弊社の所有する著作物を自由に使用しても構わない』といった誤解を与えていた」都度判断を行うと開発業務に支障を来たしてしまう」「『アカとブルー Type-R』の開発に専念したい」と説明しています。

ルールの内容は、実際には動画投稿だけでなくスクリーンショットの公開等にも影響するもので、
  • 企業ロゴ、タイトルロゴの使用禁止
  • ゲーム内画像、宣伝用画像の使用禁止(イラストやコスプレは可)
  • シナリオや脚本の公開禁止(一部引用は可)
  • 音楽、音声データの使用禁止
と、大きく分けて4つの禁止事項が設けられました

ただ、このルールはそのまま受け取ると「過去に投稿された動画」やゲームの機能である「ハイスコアの投稿機能」で公開されたスクリーンショットも削除しなければならないと受け取れるもので、実際に何人かの方は告知の直後に投稿を削除するなどの対処をとりました。

そのことについて指摘を受けると(私も指摘したうちの一人ですが)公開から約30分後に加筆修正が行われ、
  • ハイスコアの投稿は可能(ただし改ざんは禁止)
  • 過去の動画は字幕等の最低限の編集しか行っていないものなら残してよい
という条件が追加されました。

この告知に対するプレイヤーの反応は様々で、どちらかといえば肯定的な意見や、タノシマスさんに同情する意見が多かったように思いますが、否定的・懐疑的な意見もありました。

当時、私もアカとブルーのプレイ動画を投稿しようと思っていた人間の一人でした。このゲームは、リトライしやすいとは言えそれなりに難しいですし、Twitter上の反応を見ていても途中でつまづいている人がそこそこいるようだったので、攻略方法を解説する動画を作ろうと思っていたのです。それゆえにこの発表がされた時は非常に残念に思いました。

告知から約半年が経った今も、動画の投稿は禁止されています。


投稿された動画の内容

続いて、動画の投稿が禁止されるきっかけとなったUDMPさんの動画がどのようなものであったか、投稿が削除された時点で残しておいたメモを基に、私の覚えている限りで詳しく説明したいと思います。

UDMPさんにとっては一度削除した動画の内容について明かされることは不本意であるかもしれませんが、他の方が「なぜ動画の投稿が禁止されたか」を知る上で重要な情報であると思いますので、公開させていただきます。また、UDMPさんやタノシマスさんのどちらか一方に許可を取った上で記事を公開するのは公平ではないと思ったので、事前に許可を得ることはしていません。

まず、改めて掲載しますが、動画はこちらです。

投稿されたのは2018年2月17日16時21分です。経緯でも述べた通り、この動画はいわゆる「VOICEROID実況プレイ」(略して「ボイロ実況」)であり、VOICEROIDという音声合成ソフトウェアを用いた実況プレイ動画でした。

前半部は、4人のキャラクターがステージ1の実況プレイをするものでした。プレイしていたのはAndroid版ですが、録画をするとなぜか激しい処理落ちが発生してしまうとのことで、全体的に非常にスローになっている様子を収めていました。

この時、キャラクターが何らかの会話をしていたのですが、「処理落ちは環境に原因があるかもしれないので、iOS版なら撮影できるかもしれない」という会話があった程度しか覚えていません。

後半部は、「琴葉茜」と「琴葉葵」という赤と青がイメージカラーのVOICEROIDのキャラクターが、ゲーム中の「アカ・シンク」と「ブルー・サーニ」になりきって1面と2面をプレイするという内容でした。iOS版を改めて購入した上で撮影していたため、処理落ちは改善されていました。

ここでは、シナリオモードをオフに、ボイスの音量を0にし、動画編集によって画面左上にワイプを追加することで、アカ・シンクとブルー・サーニを琴葉茜と琴葉葵別のキャラクターに差し替えるという手の込んだ編集が行われていました。

そのほかの演出としては
  • 前半部のオープニングとして、タノシマスさんのロゴを手書き風にアレンジしたものが表示された。(ちょうどこんな感じのやつ)
  • 前半部と後半部の間に、アカとブルーのトレーラー映像をVOICEROIDのキャラクターで再現した映像が挟まれ、サウンドトラックをBGMとして用いていた。
  • 後半部のオープニングとして「アカとブルー」というタイトルロゴに「ネ」の文字を付け加えることで「アカネとブルー」にしていた。
などがありました。

「ネタバレ禁止」のルールについては把握していたようなので、前半部も後半部もネタバレに繋がるような情報は伏せられていました(黒幕の名前など)。続編を作ることを想定した動画でもなかったと思います。言葉だけでは分からない部分もあるとは思いますが、これが大まかな内容です。

時々動画の投稿が禁止された理由について「ルールの穴を突いた動画だった」「悪意のある動画だった」という憶測に基づく批判が見られましたが、決してそのような内容ではありませんでした。


動画が削除された原因は?

この動画に対し、タノシマスさんは投稿から7時間で「DMでTwitterアカウント宛てに連絡を取る」という異例の方法で削除を要請し、そのわずか2日後に動画の投稿を全面的に禁止したのです。そこまでする程に、タノシマスさんはこの動画の内容をかなり問題視したものと思われますが、具体的に何が問題だったのかは説明されていません。

まず第一に考えられる理由は、「ロゴの使用・改変」や「BGMの使用」などです。企業の使用するロゴというのはいわば「看板」あり、これを不用意に改変する行為はブランドイメージの棄損する恐れがあると受け取られる可能性もあります。これについてはUDMPさんもまずかったかもしれないと考えているようです。BGMの使用についても「動画投稿禁止」の記事にあるとおり、サウンドトラックを丸々投稿している動画を削除した例もあるため、原因の一つであると考えられます。これらの理由ならば、少なからず企業に不利益を与える可能性があるという点で、削除が必要だったという説明はできます。

しかし、それならばなぜ削除の理由を「著作物だから」とぼかしたのでしょうか? 著作権に基づいて削除を要請する際、詳細な理由を説明する義務があるわけではないのですが、ちゃんと説明した方が穏当に解決できるはずですし、再発防止の観点からも必要なはずです。そして何よりこのような理由だけで、動画の投稿を全面的に禁止するとも考えにくいです。

ここからは私個人の考えですが、UDMPさんの動画を削除し、動画投稿を禁止(というよりは著作物の利用をほぼ全面的に禁止)したのは、単にタノシマスさんがこの動画を不快に思ったという、感情的な理由ではないでしょうか

「ロゴの改変」や「BGMの使用」についても、タノシマスさんは良く思わなかったでしょうが、おそらくこの動画で最も不快に思われたのは「キャラクターの差し替え」という部分にあると推測しています。

これまでの活動からも、私はタノシマスさんがキャラクターやシナリオを非常に大切にしていると感じています。だからこそシナリオモードの切り替えを実装し、キャラクターやシナリオを「ゲームを購入していない人」や「まだクリアしていない人」から守ろうとしたのです。また「動画投稿禁止」のルールにおいても「イラスト」「コスプレ」「セリフの一部引用」は例外的に認めるなど、主に「キャラクターを大切にしてくれた人」に対してはこれまで通り活動できるような配慮が見られました。

そんなタノシマスさんから見たUDMPさんの動画は「自分の作ったゲームから、自分の作ったキャラクターを消され、代わりに全然知らないキャラクターを入れられた」ように映ったでしょう。しかも「キャラクターを守るために用意したはずのシナリオモードを『悪用』された」と感じたはずです。自分が同じ立場だったとしたら、動画を削除したいとまでは思わないでしょうが、考え方が違えば非常に嫌な思いをする可能性はあるはずです。

しかし、「キャラクターの差し替え禁止」というあからさまなルールを設けるわけにもいかず、だからといって「編集」自体を禁止したとしても、なぜ禁止することが必要なのかという理由を説明することも難しいです。UDMPさんに「どこを修正すればよいのか」と問われた際にも、答えに窮し「著作物だからダメ」と答えるしかなかったのではないでしょうか。

それに、編集された動画の投稿を禁止しても、不快な動画がルールをくぐり抜けて投稿されないことは保証されません。だから、タノシマスさんは「ルールによって動画の内容を制限することで、不快な思いをすることを防ぐには限界がある」と感じ、結果として動画の投稿を禁止すると決断したのではないかと思います。

「ネタバレ禁止」の記事には「※株式会社タノシマスは投稿の推奨は一切しておりません」という注意書きがありました。改めて見るとこの一文を書く必要は特にないはずで、これはタノシマスさんが、自身の著作物を多数の人が利用することについて不安を覚えていたことの現れだったのではないかと思います。

しかしこれは、タノシマスさんが感情的な理由で動画の投稿を禁止していて、「『アカとブルー Type-R』の開発に専念したい」という説明は建前だとしたらの話です。実際、あることに気づくまでは、本当にタノシマスさんが感情的な理由で行動するような企業であるかは疑問でした。

その「あること」というのは、2つあります。それについて今から説明していきます。


記事の日付の改ざん

まず1つめの理由は、投稿された記事の日付が改ざんされていたことです。いきなり何のことかと思うかもしれませんが、「動画投稿禁止」の記事の右下にある、投稿日時を見てください。


記事の右下にある日付は「2018/02/16」となっています。そして記事の文中には「2018年2月17日制定」とあります。

しかし、経緯でも説明した通り、UDMPさんが動画を投稿したのは「2018年2月17日16時21分」です。そして、タノシマスさんが上記の記事のURLを添えて、動画の投稿を禁止するとツイートしたのは「2018年2月19日14時22分」です。この記事の日付は、少なくとも19日中にはすでに書き換えられていたことが分かっています。

実は多くの人が気づいていなかっただけで、タノシマスさんが動画の投稿を禁止した後にUDMPさんがルールを破って動画を投稿し、記事の投稿から3日も経ってツイートをした、ということでしょうか? しかし、私の知る限り経緯で挙げたスクリーンショットを取った2月18日までは、この記事は「ネタバレ禁止」のままだったはずです。他にも何人かの人は、UDMPさんの動画が削除されたと知ってルールを再確認したでしょうし、この記事が本当に2月16日に公開されていたとは考えにくいのです。

日付がおかしい記事がこれだけだったなら、私の勘違いかもしれませんし、操作ミスで日付を誤って設定してしまったとも考えられます。しかし、他にも2つ日付が巻き戻っている記事があったのです

実は「ネタバレ禁止」の記事も、「2017年8月18日」に「【動画の投稿、配信について】 アカとブルーの公式サイトのニュース部分にまとめました」というツイートで公開されたと思われますが、投稿日は「2017/08/10」(発売日と同日)になっています。

そして、経緯でも挙げた「著作物について」も、最初にツイートされたのは「2017年10月7日」なのに、同じく投稿日が「2017/08/10」になっています。

「ネタバレ禁止」と「著作物について」と「動画投稿禁止」、日付の改ざんが疑われる3つの記事は、いずれも著作物に関する記事です

最初の2つの記事が公開された経緯については詳しく知らないので推測の域を出ませんが、タノシマスさんは著作物に関して何かトラブルがある度に、日付をわざと巻き戻して記事を公開していたのではないでしょうか?

「ネタバレ禁止」記事については、発売直後にネタバレを含む動画が多数投稿されたことを受けて公開されたと考えるのが自然です「著作物について」も、内容から察するに企業ロゴやキャラクター画像を無断でアイコンに使用しているアカウントが存在していたことが原因だったのではないでしょうか。

私が見た限り、これら3つの記事以外でツイートされた日付と投稿日にズレていたことはありませんでした。「偶然」著作物に関する記事だけで投稿日の設定ミスが発生したなどとは考えにくいですし、これはほぼ間違いなく意図的な改ざんによるものです

こういうことをすれば、UDMPさんが「ルールが先にあったのに、そのルールに反する動画を後から投稿した」という誤解を生む可能性があったことは容易に想像できたはずです。そうなることを期待している、いわば「未必の故意」だったのかもしれません。実際そのように誤解した人がいなかったのは幸いでしたが、日付をわざわざ確認する人なんて多くないとはいえ、非常に自分勝手で危険な行為です

単に自己満足だったとも考えられます。3件ともタノシマスさんにとって想定外の事態で、意表を突かれたことの悔しさから、自分しか見ていないつもりで日付を書き換えたという可能性もあると思います。

どんな理由であったにせよ、実際の影響の大小にかかわらず、自分に都合良く見せるために嘘の情報を伝えようとすることは、企業として以前に人として間違っています。「まだクリアしていない人のため」や「Type-Rを早く完成させたい」という説明も、より疑わしいものになると言わざるを得ません。


英語版アカウントでの対応

もう1つの理由は、タノシマスさんの公式の英語版アカウントでの発言です。

2017年9月28日のツイート

「タノシマスは従業員2人の小さな企業です。あなたの資金で実現できることには限りがあります。可能ならば、リクエストを送るよりも宣伝に協力してください。海外での販売は上手くいっていません。」

2017年10月1日のツイート

「多くの人がAndroid版のアカとブルーをコピー版でプレイしていて、売上が非常に少ないです。この状況が続くようなら、タノシマスは翻訳版を提供することはありません

文法の間違いや単語の間違いはありますが、言いたいことは理解できるので、ある程度意訳しています。その点について責めるつもりはありませんが、これだけ拙い英文であっても、海外での販売が思うように行っていないことに対する苛立ちと、相手に対する敵意は強烈に伝わってきます

1つめの発言は、多少オブラートに包んで伝えようとはしていますが「少ない金を払ったぐらいであれこれ注文を付けるな、それより宣伝しろ」と言っているようなものです。プレイヤーに対し「宣伝しろ」などという注文を付けるのは、少なくとも企業の発言としていい印象を受けない人が多いのではないかと思います。大して売り上げがないのに、リクエストを多数送ってきた海外のプレイヤーに対する、強い苛立ちが見て取れます。

2つめの発言はもっと過激で、Android版の売り上げが少ないことをコピー版のせいであると断定し、その責任を海外のプレイヤー全てに押し付けるかのような発言をしています。正規に購入したプレイヤーにはどうすることもできない問題であるにも関わらず、コピー版の存在を理由に「翻訳版を提供しない」というのは筋が通っていないですし、何よりこの発言は「コピー版で遊んでいるのは海外の人間だ」と決めつけているに等しいです。

結局のところ今現在も翻訳はされておらず、それが単に「海外での売り上げが期待できないから」であればよいのですが、このような発言がある以上「腹いせに翻訳版を出さなかった」のではないかと疑ってしまいます。

また、2つめの発言に対するプレイヤーの、

「これにはがっかりだ。タノシマスさんはただの[not just]小さなスタジオではない(だから損害も大きい)し、このゲームはたった8ドルなのに」という発言に対して、
タノシマスが小さなスタジオじゃないだと? 私たちは小さなスタジオです。私が意味を取り違えていたらすみません」

と、相手の発言を早とちりして攻撃的な返答をしています。

しかも、相手のツイートが送られてから、タノシマスさんが返答するまで6分しか経っていません。相手は上手く伝わらなかったことを謝罪してくれていますが、意味を取り違えているかもしれないと思っていたのに、なぜもっと冷静になれなかったのでしょうか。

これらのツイートは、英語に慣れておらず文法が拙いことを差し引いても、企業として真っ当な対応ができているとは言い難く、タノシマスさんが冷静な判断力を著しく欠いているように思えます。また日本語での対応と比較すると、個人的には相手が外国人だからと偏見を持って対応しているような印象も受けました。


タノシマスさんのやり方について思ったこと

私は過去のこうした事例を知ってしまったからこそ、タノシマスさんが「動画の削除」や「動画投稿禁止」などにおいて、感情的に判断していたのではないかと考えています

そもそもこうした事例を抜きにしても、投稿から7時間で削除、2日で動画投稿全面禁止などというのは、きちんと考えて決めたにしては時間が短すぎますし、「ハイスコアの共有機能」や「過去の動画の扱い」を失念するなど確認も不十分でした。

また「イラスト」「コスプレ」「セリフの一部引用」を容認しているのは「配慮」というよりは、一部の特別扱いしている人に対する「えこひいき」にも思えます。(アカとブルーに詳しい人なら「コスプレ」「セリフの一部引用」などが誰を指しているかピンと来るはずです。)

そういった理由からも、「開発業務に支障を来していた」「Type-Rを早くお届けしたい」といった説明には全く説得力が感じられないのです。何より、ただでさえ人手も資金も不足しているのに「業務に支障を来たしてまでルール違反の動画を削除しなければならない」と考えること自体、冷静さを欠いているように思えます

UDMPさんの動画には、全く問題がなかったとは言えませんが、タノシマスさんに大きな損害を与えたり、著しく公序良俗に反するような内容ではありませんでした。いくら著作権がタノシマスさんにあるといっても、いきなり動画の投稿を禁止してしまうのは理解しがたく、ましてや日付を改ざんして濡れ衣を着せることが許される道理などありません

まさしく「だからって、人を『騙して』いい理由にはなんねえだろ!」です。

「ネタバレ禁止」の際も、「まだクリアしていない人のモチベーションのため」などと言っていますが、見たくない人は最初からネタバレを含むを見ようとなんてしませんし、クリアできないから動画で結末を見たいという人だっているはずです。それなのに「結末が見たい人はクリアしなければならない」ということをプレイヤーに強要するのは、ただの善意の押し売りです。意図せずネタバレに触れてしまうことや、ゲームを買わずに結末だけ見られることを防ぎたいというちゃんとした理由があるのなら、そう説明して理解を得ればよかったはずです。結局「ネタバレ禁止」も「動画投稿禁止」も、自分たちがそうしたいだけのことを「皆さまのため」という建前でごまかしている印象を受けてしまうのです。

それから、特に「英語版アカウントでの対応」と「動画投稿禁止」に共通することですが、どちらも「○○はできなくなりました、××をした人のせいです。」という形で、気に入らない相手がいると、過剰反応して自分たちのファンがその相手を批判するように仕向けているように感じます。本来自分と問題を起こした相手との間で決着を付けるべき問題について、無関係な人を抑圧してまで無理やり味方を増やそうとしているように思えてなりません。そのような「対立煽り」ともとれる行為は何の解決にもならないですし、常識的な企業ならたとえ本当に「××のせい」だったとしても、責任転嫁しているような印象を与えないよう、表現に細心の注意を払うべきです。

以上のことから、やはりタノシマスさんには感情的な価値観に重きを置きすぎている傾向があると感じています。


「タノシマスさん」の性格

それから、どうしても気になることがあります。これまでのタノシマスさんの行動には「やられたらやり返さずにはいられない」という性格が表れているように思えるのです。

発売後すぐにネタバレをした人に対しては日付を巻き戻してネタバレを禁止した。
ロゴやキャラ画像を勝手に使う人に対しては日付を巻き戻して使用を禁止した。
ゲームに注文を付けてきたりコピー版で遊ぶ海外の人に対しては翻訳版を出さないことにした。
システムを悪用して不愉快な動画を作った人に対しては日付を巻き戻して動画投稿を禁止した。

いずれも、自分にとって気に入らないことをした人に対する仕返しのように思えます。

それから、これまでずっと主語を「タノシマスさん」としてきましたが、これはもう会社としてではなく、会社の中の個人の性格の問題として考えるべきです。先述した通りタノシマスの従業員は2人で、プログラマーの藤岡裕吾さんと、代表でありプログラミング以外の様々な作業を担当している木村浩之社長がいます。そしておそらく、これらの行動を起こしてしまった「やられたらやり返さずにはいられない」性格の人は、木村社長だと思っています

当然、会社としての意思決定に関しては、立場や年齢差を考えても木村社長が主導権を握っていると考えるのが自然です。

藤岡さんは過去にこのような記事も書いています。

理路整然としていて語彙も豊富で、非常にレベルの高い文章です。これまでに挙げた記事とは全く文体が異なります。また、記事中には木村社長が英語が苦手であるとも書かれています。藤岡さんの英語力は分かりませんが、過去の公演資料などを見る限り、”not just” の意味を読み違える程度とは考えにくいです。

ですから、日付の改ざんや英語版アカウントでの対応、UDMPさんとのメールのやり取りなども、藤岡さんは無関係であると思います。(というか、そうであることを願います。)

そもそも個人的には、ある程度インターネットに詳しい、それもプログラマーという職業の人間が、日付の改ざんや記事の上書きを許すことはありえないと思っています。こういうことをしたらどんな結果になるか、そういう人に分からないはずがないでしょう。

だからこそ、これはどうしても「犯人捜し」になってしまうのですが、これまでの問題は木村社長が原因だったと考えています。

しかし、これをもって「木村社長は性格の悪い奴だ!」と言うつもりはありません。木村社長と同じ立場にあれば、常に冷静に正しい判断をするのは難しいと思います。木村社長は、たった2人の会社の代表として、ゲーム自体の製作や色々なリクエストへの対応、資金管理など、さまざまなストレスに晒される立場にあります。自営業なので明確な休みもなく、ゲームが成功するかどうか否かに生活が懸かっています。自分で立ち上げた会社の方針について判断し、その責任を負う立場というのは、我々の想像を上回る重圧を感じるのではないかと思います。

これは私の経験上の話ですが、人間は誰しも強いストレスや不満を感じていると「自分は正しいはずだ」と思い込んでしまう傾向があります。感情の制御が苦手な人は、酔っている時や眠い時のように、その時自分では正常に判断できていると思っていても、客観的に見ると筋の通っていない発言や行動を取ってしまうことがあるのです。それは他の人だけでなく自分自身そういった経験があり、反省したい点でもあります。

木村社長の「やられたらやり返さずにはいられない」という性格も、感情の制御が苦手なために、冷静な判断ができなくなった結果であると思います。特に英語版アカウントでの対応や動画投稿禁止の際は、強いストレスや焦りを感じていることが文章の内容や対応の早さからも分かるはずです。それに、創作活動において自分の作品をないがしろにされたと感じることは、モチベーションにも大きな影響を与えるのです。「開発業務に支障が出る」というのも、あながち嘘ではないと思います。

しかし、社長に限らず人の指揮を執る人物というのは、何があっても客観的かつ冷静な判断ができなければなりません。正直に言えば、木村社長にはあまり社長職は向いていないのだと思います。それでも、木村社長が自分のやりたいことを押し通してきたからこそ、「株式会社タノシマス」が存在し、「アカとブルー」のような素晴らしい作品が完成したのだと思っています

だからこそ、株式会社タノシマスという会社の未来のためにも、そして多くのプレイヤーのためにも、木村社長には「やられたらやり返さずにはいられない」という性格を克服し、「タノシマス」の名に恥じない振る舞いを心がけてほしいと願います


木村社長なら、きっとこの記事を読んでくれていると思います。たぶん、こういった批判的な記事をスルーできる器用な人ではないでしょう。

正直、相手を批判する際、性格を悪く言うのは「人格攻撃」になってしまう部分はあるので、性格について書くべきかどうかは悩んだのですが、それでも今回の場合はどうしてもちゃんと自分の考えをきちんと述べておきたかったのです。

もし今後何かに対して不愉快な感情を抱いたなら、何か行動を起こす前に「人間は誰しも強いストレスや不満を感じていると『自分は正しいはずだ』と思い込んでしまう傾向がある」ということを思い出し、藤岡さんや奥さん、高田馬場ゲーセンミカドさんなどと話してみて、息を整えることが大事ではないかと思います。そうすれば、間違ったことは起こりにくくなるはずです。


タノシマスさんは今後どうすべきか?

これだけだと、タノシマスさんのやり方に文句を言っただけで全く建設的な意見にはならないので、大変おこがましいことではあると思いますが、タノシマスさんが今後どうすべきか、私なりの考えを示したいと思います。

日付の改ざんについて謝罪・釈明する

まず最初にすべきことはこれだと思います。影響を受けた人は少なかったとはいえ、事実と異なる情報を公開したことについて謝罪することと、なぜそのようなことが起きたのかを、できる範囲で嘘偽りなく説明するべきです。また、間違った日付の書かれた2つの記事については、日付を正しい状態に修正した上で、修正した旨を記載しておくのがいいと思います。

UDMPさんに謝罪する

例えUDMPさんの動画がタノシマスさんにとってどれほど不快であったとしても、嘘の情報を使って陥れていい理由にはなりません。タノシマスさんはUDMPさんが悪いと思っているでしょうし、謝りたくない気持ちはあると思いますが、やはり日付の改ざんによって濡れ衣を着せられかねなかった一番の被害者ですので、公の場でとは言いませんが謝意を示しておくことは必要かと思います。

今後の方針について、2人で議論する

今後、株式会社タノシマスとしてどうするか、特に動画投稿禁止を継続するか否かについては、木村社長と藤岡さんの2人できちんと議論して頂きたいです。上司と部下、年上と年下という関係ではありますが、藤岡さんなくしてタノシマスは存続できないことも事実ですから、藤岡さんの意見や考え方も尊重されるべきです。

アカとブルーを含む、株式会社タノシマスが作ったゲームの著作権は、会社の「財産」です。たとえ社長であっても、個人的な感情でその使い方を決めてしまうのは、それは会社のお金を私的に利用しているのと同じようなものです。

そして先ほども書いた通り、木村社長は悪いことが起きると感情的に対応してしまう節があるので、重要な決定を下す前に藤岡さんや周りの人に話してみることで、トラブルが起きることを避けられると思います。日付の改ざんや英語版アカウントでの対応も、誰かが相談を受けていたら止めていたはずです。何か思いつきで行動を起こす前に、ワンクッション設ける工夫が必要ではないかと思います。

動画の投稿を解禁する

そして私としては、やはり動画の投稿は解禁した方が良いと思っています。感情的に決めたことを抜きにしても、現状では解禁した方がタノシマスさんにとってもプレイヤーにとっても利益が大きいと私は考えているので、その理由をいくつか挙げてみます。


動画の投稿を解禁した方がいいと思う理由

1. ゲームにおいて「共有」ほど重要なものはない

Switch、PS4、XBOX ONEなど、現行のゲーム機はいずれも、ゲームをプレイしている様子をSNSや配信サイトで共有できる機能を持っています。それは、これらのゲーム機を開発した大企業が、ゲームプレイを共有できる機能の存在が売り上げにプラスになると考えていることに他なりません。もはやネタバレを気にして動画の投稿を禁止するような時代でないことは明らかです。

そもそも、昔のアーケードゲームこそ、ゲーム体験の共有によって人気を博したと言えます。STGならハイスコア競争であったり、格闘ゲームなら実際の対戦、そして上級者がプレイする様子を横から見るような形で、店舗や筐体を中心に体験が共有されていき、多くの人が遊ぶようになったのです。それが家庭用ゲーム機の時代になるとゲーム雑誌になり、スマホの時代になるとSNSになったりしましたが、今も昔もゲームを楽しむ上で「共有」ほど重要なものはないのです

ゲームの動画を投稿するという行為は「自己表現」でもあります。例えば、Minecraftで巨大建築を作ったり、ゼルダの伝説でスーパープレイを見せたり、PUBGで縛りプレイでドン勝してみたり・・・などなど、独自のスタイルでゲームをプレイすること、そしてそれを見て楽しむということが、当たり前に行われています。普通の実況プレイも、UDMPさんが投稿したような「VOICEROID実況プレイ」も、今はやりの「バーチャルユーチューバー」による実況プレイも全て同じで、自己表現を通して評価を得たり、体験を共有しようとしているのです。

STGにおいても自己表現をする人はいます。スコアアタックや、高難易度のプレイがそうです。例えば、この「怒首領蜂 大往生 デスレーベル」の動画はSTGプレイヤーなら一度は見たことがあるはずです。もし動画の投稿が禁止されていたら、これをクリアしようという人は現れなかったでしょうし、クリアしたと言っても誰も信じなかったはずです。

それはアカとブルーにおいても同じです。現在もハイスコアの画像の投稿だけは認められていますが、それではハイスコアを目指そうとしてくれる人はいないでしょう。「改ざんはお控えください」ともありますが、改ざんしていないことを証明するには動画の存在が不可欠なのです。

そしてこのような自己表現のために投稿された動画は、人々の関心を集め、時に大きな宣伝効果を生みます。「宣伝をしているんだから多少の無礼は許される」なんてことは全くありませんが、著作権を守ることにばかり固執して、ゲームを多くの人に知ってもらう機会を潰してしまうのはあまりにもったいないことです。

ですから、もし動画の投稿を解禁するとしても、感情的な理由で編集に制限を設けたりするべきではないと思います。最低限、マイナスイメージに繋がるような内容を禁止することは必要かもしれませんが、必要以上に自己表現の幅を狭めるべきではありません。

2. アカとブルーを誰も宣伝していない

発売から1年以上経った今、タノシマスさんもほとんど「宣伝」ということをしていません。そして、その1年のうち半年間もの間、動画の投稿によってプレイヤーから宣伝されることも禁止していたのです。普通のゲームは口コミでじわじわと売れていくこともありますが、間違いなく、動画投稿を禁止したことはアカとブルーの売り上げに良くない影響を及ぼしています

過ぎたことですが、UDMPさんの投稿した動画は、投稿されてから削除されるまでの約7時間の間に、48コメントを集めていました。これはニコニコ動画のVOICEROID実況プレイ動画としては非常にハイペースであり、順当にいけばランキング入りしてアカとブルーの知名度を上げることに大いに貢献していたはずです。会社としての利益を最優先に考えるならば、タノシマスさんはこの動画を削除すべきではなかったのではないかと思います。

今現在、アカとブルーはもはや誰も宣伝をしていない状態で、悪い言い方をすれば、新規のプレイヤーが触れる機会の少ない「閉じたコンテンツ」となりつつあります。タノシマスさんに宣伝するだけの余力がないのなら、せめて動画の投稿を解禁して少しでもプレイヤーに宣伝に協力してもらうべきです。

3. クリアできないプレイヤーは、思っているより多いはず

アカとブルーを何割程度のプレイヤーがクリアしているか、みなさんはどう考えてるでしょか。 ツイッターを見ていると「6~7割程度はクリアしているんじゃないか」と思うかもしれませんが、実は多くのゲームはそんなにクリア率は高くないのです。

Steamでは「グローバル実績データ」を使うと、実績の取得率を調べることができます。これを見て、ゲームをクリアした時に取得される実績の取得率を見れば、そのゲームのクリア率が分かります。難易度が易しいほどクリア率は高くなりますが、それだけでなく値段が高かったり、内容が面白かったり、内容が少なかったり、メジャーなジャンルだったりするほど、クリア率が高くなります。

私の持っているいくつかのゲームのクリア率を見てみます。

Portal: 53.6% - 言わずと知れたパズルアクションFPSです。ゲームに慣れていない人には難しいような、忙しい操作が要求される局面もありますが、クリア率はかなり高いです。

Portal 2: 41.6% - Portalの続編で、前作の謎が明らかになるストーリーが展開されます。クリア率が下がっているのは、ボリュームの多さとギミックの複雑さによるものと思われます。

Super Hot: 50.8% - 動きを止めると時間も止まるFPSです。初見殺しは多いですが難易度は中程度です。

Refunct: 34.5% - 一人称視点の3Dアクションゲームです。ゲームオーバー等もなく簡単なゲームで、内容も短めです。クリア率の低さは安価であるが故に「積みゲー」になっているからであると考えられます。

Va-11 Hall-A: 28.4% - テキスト多めのバーテンダーのゲームです。難易度は高くないのであまり好みでないと感じた人が途中で止めてるのかも。しかし良作です。

Bayonetta 18.8% - スタイリッシュな3Dアクションゲームです。18.8%は全難易度共通で、難易度ノーマル以上だと14.4%です。慣れないとすぐ死ぬものの、オートセーブは多めです。

NecroDancer: 8.7% - リズムに合わせて戦うローグライクでかなり難易度が高く、独特の操作に慣れるには時間がかかります。8.7%は主人公ケイデンスの最終ステージ単体のクリア率で、オールゾーンモード(4ステージ通しプレイ)のクリア率は4.2%です。

Downwell: 6.0% - 下に向けて銃を撃つ「ガンブーツ」を使って井戸の底を目指すローグライクで、こちらも難易度は高いです。ノーマルモードクリア後にアンロックされるハードモードのクリア率は1.4%です。価格の安さもクリア率を下げる要因になっているかもしれません。

・・・とこんな感じで、比較的簡単なゲームでもクリア率は50%程度にとどまっています。そして複数の要因が絡んでいるものの、やはり難しいゲームほどクリア率は下がっています。

これらを踏まえてアカとブルーの難しさがどの程度かを考えると、体感としては「ベヨネッタよりはずっと難しい、Downwellよりは苦労しなかった」というぐらいでした。スマホの買い切りのSTGというマイナージャンルであるためにクリア率が上がることを加味しても、私の予想としてはクリア率はおそらく10%程度にしかならないのではないかと思います。多めに見積もっても15%を超えることはないでしょう。

それはつまり、買った人のうち約90%はエンディングを見ていないということです。当然、ネタバレの投稿は最初から禁止されていたので、他の手段でエンディングを見ることはできません。Portalのクリア率から、実際に「エンディングを見たい」と思っている人が50%しかいないと仮定しても、やはりエンディングを見たい人の約80%が見れていないことになります。

ただ単に私がSTGが下手であるという可能性もありますので、あまり自慢できるものではないと思いますがハイスコアを載せておきます。
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90%の人がエンディングを見れていないというのはあくまで私の予想にすぎませんが、もし本当にそうだとしたら、アカとブルーというゲームは実際には遊んだ人のうち10%しか本当の意味で楽しませられていないことになります。タノシマスさん的にはそれでいいのでしょうか?

私としては「ゲームをクリアした人しかエンディングを見てはいけない」という考え方は、もはや今の時代にはそぐわないと思います。クリアした人だけしかストーリーやゲームプレイの全貌を知らなければ、そのゲームについて語り合える人は少なくなってしまいます。

今や、東方シリーズをプレイしたことがなくても二次創作を見て楽しんでいる人もいますし、Undertaleの全てのエンディングをプレイしていなくてもMEGALOVANIAを聞いたことがある人もいますし、誰もがメトロイドシリーズのサムスが女性であることを知っています。

ゲームの動画を投稿することは、映画やアニメをアップロードすることとは違います。確かに、動画で見るだけで満足して、実際にはゲームを買わないという人もいます。しかしゲームには実際に自分で遊んでみなければ分からない楽しさがあり、だからこそ動画の投稿によってゲームが共有されることがプラスになると多くの会社が考えているのです。

ゲームをクリアしていない人や、ゲームを買っていない人が、動画を通してそのゲームを楽しむということは、そんなにおかしいことではないはずです。

4. 律儀にルールを守っている人だけが損をしている

多分、皆さんも気づいていると思います。動画投稿が禁止された後も、動画やスクリーンショットを投稿している人が何人かいるのです。Twitterを見ていれば気づかないはずはありません。

そして、恐らくそのことにはタノシマスさんも気づいているはずですが、これらの動画に対して何の対処もしていません。DMが送れなくても伝える手段はいくらでもありますし、TwitterやYouTubeに対して削除要請を送ればDMCAに基づいて直ちに削除してくれます。いちいち削除が必要かどうか判断していたら開発業務に支障が出るとしてもおかしくありませんが、内容を見ずに削除要請すれば5分もかかりませんし、法人格なら個人情報の心配もいらないので、躊躇する理由もないはずです。

つまり、タノシマスさんはこれだけはっきりと動画投稿の全面禁止を告知しているにもかかわらず、実際には問題がない限り黙認、という形で「柔軟に対応」しているのです。そもそも「動画投稿禁止」はその日限りしか通知していないですし、「ネタバレ禁止」の時のように毎日botを使って告知もしていないですし、ゲームの起動時に注意事項を表示するような工夫もしていません。

明確に動画投稿を禁止して、「Type-Rのため」に本業に力を入れたいようには見えないのです。先ほどは説明を省きましたが、この点においても「動画投稿禁止」がUDMPさんにヘイトを向けさせることが目的であったようにも思えてしまうのです。

そして、このはっきりとしない対応で一番困っているのは、動画を投稿したくてもできない、動画を見たくても見られないファンの人達です。結局、タノシマスさんに興味がなくルールを気にしない人達は堂々と動画を楽しめるのに、タノシマスさんに興味がある人達は動画を楽しめない状態が発生しているので、タノシマスさんに好意的な人だけが損をしてしまう結果になっているのです。

そういう人たちも、動画やスクリーンショットが投稿されていることに気づいていないわけではありませんが、投稿した人にルール違反を指摘しようとはしません。多分、誰もそこまで熱心に動画投稿禁止という対応を支持してはいないし、できればこんなルール無い方がいいと思っているのではないでしょうか

動画の投稿を禁止するなら、きちんとルールについて周知徹底をした上で、投稿された動画に対しては可能な限り全て、正式な手段で削除要請をするべきです。中途半端な対応は、間違いなく今後再びトラブルが起きる原因にもなり得ます。それができないなら、最初から禁止することは諦めるべきです。


以上が、私の考える動画投稿を解禁すべき理由です。

もし本当に解禁するならば、全面的に解禁するだけでなく、様々なルールを定めることになると思います。

例えば、「誹謗中傷や差別的な表現」「政治的、宗教的な主張」「公序良俗に反するもの」等を禁止するものはよくあります。「この動画は株式会社○○が権利を有するコンテンツを使用しています」などといった注意書きをしなければならないといったものもあります。

動画の収益化を許可すべきかどうかも考えるべきです。感情的には「人様のゲームで金儲けとは何事だ!」となりかねませんが、収益化を明示的に認めることによって宣伝の促進になる場合もあるで、慎重に考えてほしいです。

それから、ネタバレは発売から1年も経っていますし、もう許可してもいいのではないでしょうか。クリアできずにエンディングが見れなかった人もいるはずです。

ただ、こうしたルールもあまりに厳密に適用しようとするとかえって業務に支障がでてしまいます。そもそも、従業員2人の会社が自社の著作物を完全に管理するなど不可能なのです。あくまで本当に削除が必要であると思われる作品に対する手段として用意しておくにとどめるべきであると思われます。

正直、動画の投稿を禁止していた半年という時間はあまりにも長いです。動画を投稿して楽しみたかった人は、既に他のゲームに興味が移ってしまっているかもしれないので、今更元に戻したところで大きな効果は期待できないかもしれません。ただ、やはり今後Type-Rが出て、Type-Sも出るとなれば、いずれは動画の投稿をこれからも禁止すべきかどうか考えることになると思います。

遅すぎるということはないと思いますし、木村社長と藤岡さんには改めて検討して頂きたいです。


著作権について

ここまで若干説明不足気味だった、著作権についての話をしたいと思います。これはあくまで私人の著作権に対する価値観を明らかにするために書いた側面もあるので、興味のない方は読み飛ばしても構いません。

著作権は、自身の作った作品について、作者が使い方を決めることができることを保障するもので、その作品作者に対し自動的に付与される権利です。

ゲームの著作権は開発した会社にあり、ゲームの動画を投稿することだけでなく、スクリーンショットを撮ったり、キャラクターのイラストを描いたりすることも著作権侵害になります。これらの行為を実際には多くの人が行っていますが、それはゲームの開発者が黙認してくれているからです。著作権侵害は親告罪なので、権利者が訴えなければ違法にはならないのです。ですから、こういった活動は「権利者に怒られない範囲でやらないといけない」ということは、誰もが認識しなければなりません。

しかし、タノシマスさんがゲームの発売後に告知した「ネタバレ禁止」の記事には、「※個人的に楽しむこと以外の目的で動画などを投稿し、第三者に公開する行為は本来、著作権違反となります。」という一文がありました。これは確かに正しいと言えば正しいのですが、著作権侵害を「本来であれば違法」のように解釈すべきかというと、ちょっと違うのではないかと思うのです。

著作権法には、確かに「他人の著作物を勝手に使うと罰せられるよ」と書いてあります。これは刑法で定められていることなので、最悪罰金や逮捕もありえるということです。しかし実際には著作権の侵害を刑事告訴する例は少なく、民事訴訟によって損害賠償請求を行うというような形が多いです。いきなり訴訟ということも普通は考えにくく、事前に何らかの警告を行い、応じなかった場合に起きることです。

ですから、実際には「自分の著作物を望まない形で使われた場合、作品を取り下げるように警告することができる。応じない場合は民事訴訟を起こすことができ、必要ならば刑事告訴もできる。」という形で運用されています。要するに著作権法は「著作物の扱いに関しては著作権者が一番偉い」ということを定めているのです。他人の著作物を使う事は全て悪いことであると言っているわけではありません

著作権の侵害が違法になっているのは、住居侵入が違法であるのと同じようなものであると私は考えています。自分の所有している土地、例えば自宅やお店などでは、望まない人やその場のルールを守らない人が入ることを拒むことができます。お店に入るのに、わざわざ住居侵入で訴えられるんじゃないかとビクビクする人はいません。しかし、例えば夜中にこっそり建物に侵入したりすれば、訴えられる可能性はあります。何をもって住居侵入とするかは、結局はその土地の所有者次第なのです。

どちらも「権利を有している人が一番偉い」という点では同じで、訴えないことを条件に権利が及ぶ範囲で他人にルールを守らせたりといったことが可能なのです。全面的に侵入を禁止している場所もあれば、「大声でしゃべるな」という場所もありますし、トイレのように男か女しか入ってはいけない場所もあります。しかし、明確なルールがないことの方が多いですし、その場合は結局「一般常識」で判断するほかありません。著作物も同じで、完全に禁止されている場合や、利用条件を守れば利用してもよいという意思表示をしている場合や、明確なルールはないものの利用を黙認している場合もあります。

つまり、他人の著作物を使うことは人の家に入ることと似たようなことであって「本来であれば違法」というのはちょっと飛躍した考え方ではないかと思うわけです。著作物が土地と違うのは「誰でも簡単に作ることができる」「世界中どこからでも閲覧・複製が可能(なものもある)」「侵害されたことに気づきにくい」「二次創作(N次創作)が可能」など、いろいろあると思います。そのため、著作権に関する問題は土地に関する問題よりも起きやすく、慎重であることが求められるのです

これに関しては独自の見解に過ぎない部分もあるので、話半分程度に考えてください。別に「他人の著作物を使うことはいつでも許されるべきだ!」と思っているわけではありません。やはり最終的に一番偉いのは権利者なので、アカとブルーの動画を投稿できるようにするかどうかはタノシマスさん次第です


話は変わりますが、動画の投稿を厳しく制限していたゲームは少ないながらも存在します。例えば、株式会社アトラスから発売されているペルソナシリーズなどです。中でも、最新作の「ペルソナ5」において、興味深い事例が発生していたので紹介します。


アトラスさんは、「ペルソナ5」の動画投稿について、「動画を投稿したらアカウントを停止する」というほど強硬な態度をとっていました。しかしこのことが海外で反発を招き、結果的にアトラスUSAは謝罪し、ストーリーの終盤の動画を投稿することについて「控えるようにお願いする」に留めることになったのです。(ただしこの時は海外版のみ。)この出来事は、世界的に見て「プレイヤーには動画を投稿する権利がある」という考え方が広まりつつあることを示しているとも言えます。

しかし、これに関してはアトラスさんの「著作権を利用してプレイヤーを脅すような態度」が問題であったと言えます。PSNのアカウントにはこれまでにオンラインで購入したゲームのデータなども含まれており、アカウントを停止されると購入する際に使ったお金は戻ってきません。アカウントを「人質」のようにして著作権を守ろうとするのは、明らかに行き過ぎた対応として見られたのです。

当然ですが、著作権を有している側が著作物を利用している側にしていいのは、何らかのルールを課すことであったり、作品を取り下げるよう警告することであったり、最終手段として民事訴訟や刑事告訴を行うことだけです。誰かが勝手に使ったとしても、その人を殴ったり名誉を傷つけたりして良いわけがないのは当たり前で、その人の持ち物であるアカウントを奪うことも、その人に対して濡れ衣を着せて社会的信頼を失わせようとすることも許されていません。当たり前ですが、どんな法を犯した時でも「私刑」のような行為が許されないのは同じです


色々と話が飛んでしまいましたが、つまり何が言いたいかというと「著作物の使い道について決める権利を持つのは著作権者だけど、権利者が著作物を使う側よりも絶対的に上の立場にあるということではない」ということです。どのような場合であっても、相手に対して敬意を持って接することは忘れるべきではないと思っています。


まとめ

書きたいことがありすぎて無駄に長くなってしまいましたが、私の意見をまとめると以下のような感じです。

  • アカとブルーは素晴らしいゲームだ!
  • UDMPさんの動画を削除した際のタノシマスさんの対応は良くなかった
  • その他にも不適切な対応が過去にあった
  • タノシマスとしての意思決定は、木村社長と藤岡さんの2人で行うべき
  • 動画の投稿は禁止するべきではない
  • 「著作権侵害すなわち悪」ではないし、著作権者も動画投稿者も同じ人間


最後に

そもそも、なぜこんな記事を半年以上も経って公開したのか、疑問に思っている方も多いと思います。それは単にどう書いたらいいか悩んでいたからです。

本当は「動画投稿禁止」から一か月以内には公開してしまうつもりでいました。「このようなことが起きた原因は木村社長の性格ではないか?」という疑問は最初から持っていたのですが、それを書くとどうしても「人格攻撃」になってしまうので、なんとか穏便な書き方を探っていたら、いつの間にか半年も下書きのまま寝かせていました。

悩んでいた理由の一つに、二か月ぐらい経った時に「日付の改ざん」や「英語版アカウントでの対応」に気づいてしまったこともあります。これを書くと内容はさらに多くなりますし、明らかになっていない事実を明らかにするという点で、どうしてもキツい表現になってしまいがちでした。

匿名掲示板にでも投げれば楽だったのでしょうが、それではタノシマスさんの印象を悪くするだけで、解決にはつながらないと思ったのです。結局だいぶ時間はかかってしまいましたが、自分の言葉で伝えることにしました。

しかし、まだこれでもやっぱりキツい表現に感じる部分はあると思います。なるべく努力はしましたが、自分に藤岡さんくらいの文章力があればもっとマシな記事にできたかもしれません。今後の反省点です。


・・・とまあ、感じのいいことを言ってはみましたが、この記事を公開するにあたって、タノシマスさんや木村社長に対して悪い感情が全くなかったと言えば嘘になります

自分はこっそり日付を改ざんして人を騙そうとしておきながら、ハイスコアに関して「改ざん等はお控えください」なんてお願いするような奴なんか嫌いにきまってるだろバーカ!

私自身動画を投稿したかったと言いましたが、当初は投稿したかったからこそ記事を書こうと思ったし、どのような内容にするか悩んでいたのです。それも日付の改ざんを知ってからはどうでも良くなりました。

作者と作品は分けて考えるべき」なんて言葉もありますが、やっぱり嫌いな人の作ったゲームを楽しく遊ぶのは私には難しいです。この半年間、ほとんどアカとブルーは起動していません。正直、このままタノシマスさんが何もしなければ、Type-RやType-Sを遊ぶこともないと思います。


それでも、やはりタノシマスさんには謝罪すべき点については謝罪し、これからもファンの方々とは良好な関係を築きつつ、新たな作品を作り続けてほしいと思っています。

株式会社タノシマスの会社概要には、こう書かれています。

これまで当たり前にやってきたことで、現在、自分達にしかできないことをやっていく
やりたいことをやっていくのではなく、期待に応えていく中でやるべきことをやっていく
我々タノシマスのメンバーはモノづくりを通して、みなさまを楽しませることに全力投球します

タノシマスさんの社名は間違いなく株式会社「タノシマス」です。「カナシマス」でも「ダマシマス」でもありません。会社として掲げた目標と、名前に恥じない振る舞いを心掛けて頂きたいです。

タノンマス!!